質問
★「喪主(もしゅ)」「施主(せしゅ)」はどう違うのですか。
回答
若林隆壽
以前は、亡くなった方のある家では、「忌中(きちゅう)」と掲示がされていましたが、葬儀が自宅で行われることが少なくなるにつれ、その風習もだんだんに見られなくなってきました。
同様に「親族を亡くした人が、一定の期間、家にこもって身を慎(つつし)む」という追悼(ついとう)の礼である「喪に服する」という行為も、かつては、両親は十三ヶ月、子供は九十日などと規定されていましたが、現在では年賀状を遠慮する以外にはほとんど行われなくなりました。したがって「喪主」というのは、いまや「葬儀を中心になって執(と)り行う当事者」というだけの意味になりつつあります。
これに対して「施主」は、「法要(ほうよう)を執行(しっこう)する当事者」=「お寺さんに差し上げる<お布施(ふせ)>を出す人」という金銭的な費用負担のイメージがつきまといますが、この言葉の持つ意味はそれだけではありません。実は「施」の字が示しているのは「布施行(ぎょう)」という修行でもあるのです。
亡き人を想い、偲(しの)ぶ法要の日、その中心となって「布施行」を積むのが「施主」というわけです。
もちろんそれはお金だけのことではありませんし、法要の日に限ったことでもありません。笑顔で人に接する、優(やさ)しい言葉をかけるなど、日常生活の中で、人に幸福を与える実践の機会はいくらでもあるはずです。
毎日のお仏壇へのお給仕(きゅうじ)など、各人各人が自(みずか)ら「施主」となってできることを探してみましょう。