第一に、呼吸停止時に最も大切なことは、十分な酸素を脳細胞に速やかに送り込むことです。何故なら、酸素を蓄積する事のできない脳細胞は、酸素が3〜4分間も送られてこないと、どんどん細胞が破壊されて二度と元に回復できないからです。つまり、脳の障害の原因は、時間の経過と供に加速されるということです。特に脳血管の血栓や内出血があれば、空気中の酸素より高濃度の酸素を血管のバイパスを通じて脳細胞に送り込むことが急がれます。これによって細胞破壊を最小限度に食い止めることができるわけです。
第二に、人間の1回の換気量は、体重1キロに対し10ccといわれ、成人の場合は、450〜500cc/分であり、呼吸回数は15〜20回程度です。人工蘇生器は小児から成人まで幅広く、対応できるようにこれらの数値が自動制御されているので安心して使用できます。
第三に、人工呼吸は、施術者の都合で中止するわけにはいきませんが、人工蘇生器を使用している場合、救急車で病院への搬送中も継続して人工呼吸を行えるわけです。(ガスボンベが満タン時で約20分連続使用できます。)交通事情の悪化で、救急車の現場到着に時間がかかる地域では、特に大切です。
第四に、被災者の口やおう吐物に直接接触しないので施術者を肝炎・エイズ等の二次感染から守れます。
第五に、吸気・呼気の呼吸リズムを自然呼吸と同じように整えることによって、肺胞でのガス交換をスムーズに行い、脳細胞への酸素供給を間断なく行えます。手動による人工呼吸では、肺の弾性による呼気となりますが、自然呼吸のようにはいかず、時間のズレが生じてきます。通常、吸気と呼気の呼吸相比は1:2ですが、人工蘇生器はこの相比に合わせて人工呼吸ができます。
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