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続・質問帳

若林隆壽

質問

祖母が、「お線香(せんこう)は仏様の食べ物だよ」といいます。どういうことですか。

回答

若林隆壽

 

  仏教以前のバラモン教などでは、儀式(ぎしき)の際に、動物をお供(そな)え物としていました。それに対して「不殺生(ふせっしょう)」を説いた初期の仏教が、花や水、灯火とともに、香木(こうぼく)を焚(た)いて供えたのが、今日(こんにち)われわれがお焼香(しょうこう)したりお線香をあげたりしてお参りするようになった起源(きげん)だといわれています。
「アロマテラピー」などを持ち出すまでもなく、「香り」が、こころを鎮(しず)めたり、高揚(こうよう)させたりと、いろいろな働きがあることを、昔の人は経験的に知っていたのでしょう。
「抹香(まっこう)」は沈香(じんこう)と栴檀(せんだん)との粉末、または樒(しきみ)の葉と皮とを乾(かわ)かしたものを粉にしたお香のことですが、「抹香臭い」という言葉が「仏教らしい感じがする」という意味に使われるように、お仏壇(ぶつだん)やお墓へのお参り、通夜や葬儀、お寺での法要(ほうよう)など、お線香やお焼香は、お参りに欠かすことのできないものになっています。
「お線香が仏様の食べ物」というのは、「毎日お参りを、欠かしてはならない」ということを、比喩(ひゆ)的に表現したものです。
毎朝夕、お仏壇にお線香をあげてお参りし、静かに手を合わせる。亡き方たちにお食事を差し上げるような心持ちで、あるいは一緒に食事を摂っているような気持ちで一時(ひととき)を過ごす。朝から晩まで時間に追われる生活を続けている現代人にとって、そんな穏(おだ)やかに流れる時を持つことが、実はとても重要なことなのかもしれませんね。

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