質問
★「悪(わる)ガキ」などという言い方がありますが、「ガキ」は仏教の言葉ですか。
回答
若林隆壽
決して良い言い方ではありませんが、子供のことを「ガキ」というのは、お腹を空(す)かせた小さい子供が貪(むさぼ)るように食べることがあるのを「餓鬼(がき)」になぞらえたものです。
仏教では、生前に、欲ばりだったり、嫉妬(しっと)深かったり、貪りの心で行動したりした者が「餓鬼道(がきどう)」に堕(お)ちるといいます。そこでは、常に飢(う)えや渇(かわ)きの苦しみにさいなまれ、食べ物も飲み物も、口に入れようとした途端(とたん)、火に変わってしまうと説かれています。
『正法念処経(しょうぼうねんしょぎょう)』というお経には、自分だけご馳走(ちそう)を食べた者、酒に水を混(ま)ぜて売った者、悪事で他人の財産を手に入れた者など、何と三十六種類もの「餓鬼」について、その受けなければならない罰(ばつ)が、それぞれに規定されています。
世界には今日食べる物にも事欠く人々がまだまだ沢山います。しかしその原因は、干(かん)ばつ、洪水、地震などの自然災害、あるいは政情不安等に伴(ともな)う貧困であって、欲ばりや貪りの報(むく)いではありません。
では、まがりなりにも先進国といわれるわが国ではどうでしょう
「清貧(せいひん)」が美徳(びとく)と讃(たた)えられた時代は遠く過ぎ去り、「欲しいときに欲しい物が何でも手に入る」、国民全体に、そんな「コンビニ感覚」が蔓延(まんえん)しています。物質的には恵まれているといえる時代、誰もが生きたままの「餓鬼」となりうる危機(きき)的状況にあるように思えてなりません。