質問
★お彼岸は修行する期間だと聞きました。本当ですか?
回答
若林隆壽
お彼岸のお中日、朝7時になるとお寺の門が開くのを待ちかねたように、ほうきとバケツ、雑巾を手にして、若いときお世話になった会社の社長さんのお墓に向かわれる中年の男性があります。
汗だくになりながら草取りをし、次に裸足になってピカピカになるまで墓石を磨き上げ、最後は向こう三軒両隣のお墓の掃き掃除をして、それからようやくお参りとなります。
以前「偉いですねー」とお声をかけたら、「いやー、単なる自己満足ですよ。恩返しとは名ばかりで、自分の修行だと思ってやっているんですから」と謙遜(けんそん)されていましたが、実はここに本来お彼岸の持っている意味がいくつも入っています。
秋のお彼岸のお中日・秋分の日は「祖先を敬(うやま)い亡くなった人々を偲ぶ日」と規定されていますが、お彼岸は、そればかりでなく六波羅密(ろくはらみつ)といって、菩薩(いずれは仏さまになって、人々を救おうと考える人)の修行、すなわち、布施(施す)・持戒(慎む)・忍辱(忍ぶ)・精進(励む)・禅定(心身を静める)・知慧(学ぶ)という六つの修行を行う修養期間とされています。
お彼岸は、迷いの世界であるこちらの岸(此岸しがん)に対して、川をはさんだ悟りの世界、向こう岸を表す言葉です。同じお墓参りでも、ただ手を合わせるだけでなく、彼岸への橋を架ける心掛けを持ったなら、自分自身が磨かれることでしょう。